【医療コラム】ノロウイルスについて

通常、冬場に流行するノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の流行がまだ続いています。感染性胃腸炎はノロウイルス以外にもロタウイルスなどのウイルスや細菌による胃腸炎も含まれますが、今回はその中で最も多いと言われるノロウイルスについて、臨床検査技師の観点から説明します。
通常、冬場に流行するノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の流行がまだ続いています。感染性胃腸炎はノロウイルス以外にもロタウイルスなどのウイルスや細菌による胃腸炎も含まれますが、今回はその中で最も多いと言われるノロウイルスについて、臨床検査技師の観点から説明します。
ノロウイルスによる食中毒は、1年を通じて発生していますが、特に12月~1月にピークとなる傾向があります。ノロウイルスは感染力が非常に強く、少量のウイルス(10~100個程度)でも感染すると言われ、体内(腸管)で増殖し、腹痛やおう吐、下痢などの食中毒の症状を引き起こします。
また、ノロウイルスは過去に一度ノロウイルスに感染していても免疫がつかず、何度でも感染する可能性があります。
①経口感染
ノロウイルスに汚染された牡蠣などの二枚貝を生のまま、または加熱不十分で食べた場合に感染します。
ノロウイルスに感染した人が調理することによって、手指等を介して食品にノロウイルスが付着し二次感染を起こします。このケースが一番多いです。
②接触感染
感染者のふん便やおう吐物、ノロウイルスが付着した物などに触れて手指等にノロウイルスが付着することによって感染します。
③飛沫感染
感染者のおう吐物が床に飛散した際などに、周囲にいてノロウイルスの含まれた飛沫を吸い込むことで感染します。
④空気感染
感染者のおう吐物が乾燥しノロウイルスが空気中を漂い、これを吸い込むことで感染します。
感染から発症までの時間(潜伏期間)は24~48時間で、主な症状は吐き気、おう吐、下痢、腹痛、頭痛、37℃から38℃の発熱などです。通常、これらの症状が1日から2日続いた後、治癒しますが、持病のある人や乳幼児・高齢者などは、脱水症状を起こしたり、症状が重くなったりするケースもあるので注意が必要です。
臨床症状や周囲の感染状況等から診断されることが多いです。糞便を用いたノロウイルス抗原定性検査がありますが、保険適用となるのは、3歳未満、65歳以上など一部の患者に限られます。医師が医学的に必要と認めた場合に検査が行われ、診断の補助に用いられます。
また、この抗原検査はノロウイルスに感染していても陽性とならない場合もあり、この検査が陰性でもノロウイルスを否定できません。
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。基本的には点滴などの対症療法が行われます。
・せっけんを使って流水で丁寧に手を洗う。※アルコール消毒はノロウイルスに対して効果が期待できません。
・下痢や嘔吐の症状がある人は、食品を取り扱う作業をしない。
・感染者が使った食器などは、熱湯(85℃以上)で1分以上加熱するか、塩素消毒液に浸して消毒する。※塩素消毒液は、家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤で代用できます。
・感染者のおう吐物やおむつを処理するときは、使い捨てのマスクや手袋などを着用する。
・症状が治まってからもしばらくの間、便からノロウイルスが排出されるので、手洗いなどの予防を徹底する。
・厚生労働省ホームページ「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/norovirus/)
・厚生労働省ホームページ「ノロウイルスに関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
・政府広報オンライン「ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?」(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201811/3.html)
・首相官邸ホームページ「ノロウイルス(感染性胃腸炎・食中毒)対策」(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/noro.html)
・日本感染症学会「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応 – 感染症クイック・リファレンス 58 ノロウイルス感染症(Norovirus infection)」(https://www.kansensho.or.jp/ref/d58.html)
執筆者:函館五稜郭病院 臨床検査技師
掲載日:2025年5月10日