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「フレイル」ってなに?-元気に生活し続けるために-

 みなさんは「フレイル」という言葉をご存じですか?最近は新聞やテレビでもきいたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 ご高齢になるほど「ふしぶしが痛い」「わけもなく疲れる」などのご経験があると思いますが、フレイルとは「健康な状態と、介護が必要な状態の、中間の状態」を意味します。

 フレイルはあくまで、その時点の状態であり、日常的な運動などの予防により、健康な状態へ戻ることが可能です。

 今回はこの「フレイル」について理学療法士の観点から予防や対策をご紹介します。

フレイル

フレイルの判定

 フレイルの医学的は判定は、日本では主に「J-CHS」という判定基準が使用されいます。

 次の5項目のうち、3項目以上に該当すると、今現在「フレイル」である可能性があります。

項目 評価基準
体重減少 ここ6か月間で、2kg以上の体重減少がある。
筋力低下 握力 男性28kg・女性18kgより低い(弱い)
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度 1.0m/秒より低い(遅い)
※1秒で1メートル未満、1歩70cmとして1秒に2歩程度
身体活動 次のふたつのどちらも、週に1回もしていない
①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?

Sakake S,et al.Geriatr Gerontol Int.2020;20(10):992-993

※あくまで目安として、お困りの際は医療機関を受診してください。

判定の結果

3個以上 フレイル
1~2個 フレイル予備軍(プレフレイル)
0個 健康(ロバスト)

健康な状態を維持するために

 フレイルの状態は、運動などにより健康な状態に戻ったり、フレイルになることを予防できたりします。

 代表的な運動としては「歩くこと」です。国策である健康日本21では、「日常生活において身体活動量を増やす具体的な手段は、歩行を中心とした身体活動を増加させるように心がけること」としています。

1日あたりの歩行の目安

※1歩70cmとして試算

男性・成人 9,200歩(6.4km程度)
男性・65歳以上 6,700歩(4.6Km程度)
女性・成人 8,300歩(5.8km程度)
女性・65歳以上 5,900歩(4.1km程度)

 はこだて市民健康大学では「元気いっぱいのすこやかライフを目指す」として様々な参加型イベント開催しているようです。楽しみにながら運動したいという方は参加してみてはいかがでしょうか?

【外部リンク】100万歩チャレンジ(はこだて市民健幸大学「実行委員会事務局 [函館市保健福祉部健康増進課内])

ご自宅での運動

 筋肉量の増加や強化という観点からは、歩くことにプラスして「筋力訓練」などの運動も必要とされています。
ご自宅でもできる運動としては手軽な「椅子からの立ち座り」「スクワット」などが挙げられます。関節を大きく動かす軽い準備体操やふくらはぎや太ももの裏側のストレッチなどを行うのもよいでしょう。

筋力強化のトレーニング

 ※それぞれの運動を行う前には必ず準備運動をしてください。準備運動なしで行うと怪我や痛みの発生、急な運動による心疾患の発症(心疾患事故)を防ぐために重要です。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 理学療法士 青山

掲載日:2022年8月30日

参考文献・引用など

  • ・厚生労働省「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」2012
  • ・厚生労働省「第58回社会保障審議会介護保険部会 鈴木隆雄委員提出資料」2016
  • ・葛谷雅文「老年医学におけるSarcopenia & Frailtyの重要性」日本老年医学会雑誌 2009; 46: 279-285
  • ・Sakake S,et al.Geriatr Gerontol Int.2020;20(10):992-993.
  • ・東京都福祉保健局「東京都介護予防・フレイル予防ポータル」https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kaigo_frailty_yobo/index.html、2022年8月確認
  • ・はこだて市民健康大学「はこだて健康ナビ」https://hako-kenko.com/、2022年8月確認
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