睡眠時無呼吸症候群とCPAP療法
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、寝ている間に何度も呼吸が止まってしまう病気です。
日本でこの病気が注目されるきっかけになったのが、2003年2月に起きたJR山陽新幹線の居眠り運転事故だと言われています1)。
代表的な症状にいびき、日中の強い眠気、体のだるさ、集中力の低下、朝起きたときの頭痛などがあります。
「いびきをかいているなんて恥ずかしくて病院に行けない」と思われる方もいるかもしれませんが、日本には50万人を超える治療中の患者さんがいます2)。また治療をされていない方を含めると日本では500万人以上の潜在患者さんがいると推定されています3~5)。
このように、睡眠時無呼吸症候群は決して珍しい病気ではありませんので、お近くの医療機関にお気軽にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群を治療する方法の一つに持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure:CPAP(シーパップ)療法)があります。
眠ると喉の緊張がゆるみ、舌の付け根が空気の通り道(気道)を塞いでしまうことで無呼吸になってしまいますが、CPAP装置を使うと気道が塞がらないように空気を送り込むことができるため、無呼吸になるのを防ぐことができます。
CPAP装置の大きさはお弁当箱ぐらい(写真1)で、そこから空気を送るためのホースが伸び、ホースの先端にマスクがあります。
寝室の枕元にCPAP装置を置いて、就寝前にマスクをつけて眠りつく(写真2)。CPAP療法はとても簡単で、痛みのない治療方法です。
函館五稜郭病院では臨床工学技士が患者さんに、CPAP装置の取り扱い方法についてオリエンテーションを行っています(写真3)。
臨床工学技士は、CPAP装置を含む医療機器を取り扱う医療専門職です。
-オリエンテーション中などに、患者さんからよく頂く質問です。
- Qこんなマスクを付けたまま眠れるの?
- Aマスクを着けたまま眠るということは今までなかったことなので、最初は戸惑いや違和感があります。しかし患者さんのお話を聞いたところ、3か月程度で治療に慣れる方が多いです。
- Q機械が送る空気に違和感はないの?
- ACPAP装置は患者様の呼吸に合わせて空気の送る力を自動的に調節しているので、違和感が少なくなる仕組みがあります。
このように医療機器に詳しい私たち臨床工学技士だからこそ、的確なアドバイスができると考えています。治療を受けられる際には丁寧な説明を心掛けています。
今後も定期的に医療コラムを投稿しますので、臨床工学技士の仕事についても注目して頂けると嬉しいです。
執筆情報
執筆者:函館五稜郭病院 臨床工学技士
掲載日:2022年9月10日
参考文献・引用・出典など
- 1)平成15年度交通安全白書概要「睡眠時無呼吸症候群(SAS)問題対策」内閣府、2003年(https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h15kou_haku/h15gait2.html)
- 2)日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
- 3)Yuriko Doi, J.Natl.Inst.Public Health,61(1):2012,
- 4)Tanigawa T, Tachibana N, Yamagishi K, Muraki I, Kudo M, Ohira T, et al. Relationship between sleepdisordered breathing and blood pressure levels in community-based samples of Japanese men. Hypertens Res. 2004;27:479-84,
- 5)Cui R, Tanigawa T, Sakurai S, Yamagishi K, Imano H, Ohira T, et al. Associations of sleep-disordered breathing with excessive daytime sleepiness and blood pressure in Japanese women. Hypertens Res. 2008;31:501-6