看護場面とナイチンゲールの『看護覚え書』
「看護覚え書」はフロレンス・ナイチンゲールによって1859年に書かれた「Notes on nursing : what it is, and what it is not 」の完訳で、現在も看護の思想の原点としてすべて看護を学ぶ者の必読書と言われています。
このコラムは当院看護師が実際の看護場面を振り返り、「ナイチンゲールの『看護覚え書』」と照らし合わせた学び今回をご紹介します。
シーン
-回腸導管手術を受ける患者の最後の自己排尿-
回腸導管手術※1の当日朝。患者さんに手術室への入室前にトイレを済ませるように声を掛けました。トイレから出てきた患者さんが「自分でする最後のおしっこしてきたよ」とおっしゃったその時、患者さんの思いについて考えさせられました。
自分は手術当日に流れに沿って、業務として、いつもと同じように関わり、患者さんの気持ちを何も考えずに声を掛けていたと気付きました。
※1回腸導管手術・・・膀胱を摘出した後に、尿を体外へ人工的に排出するための手術。手術後は体表面に設置したストーマより断続的に尿が排出されるため、自ら排尿することが出来なくなる。参考:がん情報サービス 膀胱がん治療
ナイチンゲールの看護覚え書より
-以下より引用 F.ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年 pp227-
~看護師のまさに基本は、患者が何を感じているかを、患者に辛い思いをさせて言わせることなく、患者の表情に現れるあらゆる変化から読みとることができること~
看護師の最も基本的なことは患者の気持ちを知ることにあります-
日々の業務になれてしまい、患者さんの抱える苦悩、手術を決心して臨む最後の自排尿に対する思いに配慮した関わりが出来ていませんでした。看護師として、1人1人の患者が抱える精神的苦痛に気付いて寄り添っていく関わりをしていかなくてはならないと気持ちを改めました。
執筆情報
執筆者:函館五稜郭病院 看護部
掲載日:2022年10月10日
出典
フロレンス・ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年