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CTのおはなし③

 第2CT室に昨年導入されたキャノンメディカルシステムズ社製Aquilion ONE PRISM Editionは、DECT(Dual Energy CT)が搭載されています。通常のCTスキャンではSECT(Single Energy CT)、すなわち1種類のX線のエネルギー(主に120kVp)を使用しています。今回紹介するDECTでは、120kVpより低いエネルギーと高いエネルギーの2つの異なるエネルギーで撮影を行い、得られたデータから通常のCTスキャンでは得られない情報を得ようとするものです。

 肺血栓塞栓症は、主に下肢静脈にできた血栓が血流に乗って肺動脈を閉塞し、肺循環障害をきたすことによって起こります。肺血栓塞栓症が疑われる患者さんにはCT検査が行われることが多く、造影剤を用いて検査します。血栓は造影剤で染まらないのでそのコントラストの違いで血栓の所在を把握することができます。これをDECTで撮影すると、通常の画像の他に造影剤の成分を抽出して肺の血流の様子をカラーで表したヨードマップを作成することができます。

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    通常の画像(赤丸は血栓)

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    ヨードマップ(緑丸は血流が低下している部分)

 椎体骨折は骨粗鬆症と脊椎腫瘍、そして転落や交通事故などの衝撃の強い外傷によって起こります。骨折は通常のCTスキャンでわかりますが、DECTで撮影することにより、新旧病期評価が可能となります。骨折初期は髄内血腫が見られ、その部分が下の画像のようにと高信号を呈しますが、時間が経った骨折は血種が無くなるので信号が無くなります。

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    通常の画像(赤丸は骨折部位)

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    水成分を強調した画像(赤丸は骨折部位)

 DECTの主な特長として,画像のコントラスト向上やアーチファクト低減による画質改善,高精度な物質弁別などが可能であるといわれています。以前のCT装置でも連続2回転方式という撮影方式でDECTは可能でしたが、2回スキャンするということで被ばく線量が増加してしまうこと、スキャン間の時間差が生じてしまい、この間に被写体が動いてしまうと正確な解析ができなくなる可能性あるという2つのデメリットがありました。

 最新CTに搭載されたDECTは、高速スイッチング方式という撮影方式が採用されています。この方式は、短い間隔で2つのエネルギーを切り替えながら連続的に撮像できるので時間差の問題が解消され、スキャン回数も1回で済みますので被ばく線量も通常のスキャンと変わらない線量で撮影することができます。

 DECTは様々な視点から新しい提案がなされており、今後の発展が期待されている技術です。この技術を上手に活用し、診療のお役に立てるよう努めていきます。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 診療放射線技師

掲載日:2023年1月30日

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