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血液透析と水について

 腎臓には、主に血液中の老廃物や余分な水分を体の外に排出する機能が有ります。それらが十分に機能しなくなった状態を腎不全と言います。症状が進行し末期の腎不全になると、老廃物を体の外に取り除くための治療が必要とです。代表的な治療法として「血液透析」があります。

 この血液透析を行うために絶対的に必要なもの、それは「水」です。血液透析を行うための薬剤である「透析液」を作成するには、原液状の薬剤をきれいな水で34倍にも薄めて使用するため、大量の水が必要となります。

透析液とは

 血液透析では、ダイアライザーと言われる「人工腎臓(図1)」を介し、血液側から透析液側へ、また透析液側から血液側へと成分が移動することで徐々に血液が浄化され、正常な状態へと近づいていきます。

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 図2はきれいな水を作成する「RO装置」の処理工程を示しています。

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 いくつものフィルターを通って、最終的には注射液などと同程度の清浄度を持つ「RO水」を多量に作り出すことが出来ます。図3は当院で使用している実際の装置です。当院では月に1度水質検査を行ない、水が正常化されているか菌などが含まれていないことを確認し管理しています。

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災害に弱い血液透析

 水をきれいにする必要は理解していただけたと思いますが、実際の治療ではどれだけの水を使っているでしょうか?

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 1人の患者さんを治療するために必要な水の量は1回当たり約120ℓとなります(4時間の透析の場合)。500mℓのペットボトルであれば240本、2ℓのペットボトルであれば60本分に相当します。

 当院の透析センターのベッド数が49床であり、2クールで治療を行う場合、1日約100名の患者さんの治療を行なっています。

1日に使用する水の量は120ℓ × 100名
=12,000ℓ(12トン)の水が必要となります。

 また水を処理する工程でも約6,000ℓが必要で、合計18,000ℓ(18トン)もの大量の水が必要になります。

 もし地震等の災害が発生し十分な水が確保できない場合は血液透析は施行できません。そのような事態が発生しないよう当院では井戸水を活用したシステムを構築しています。井戸水専用の大型浄化装置を地下に設置し、井戸水を病院全体の上水として普段から活用しているため、万が一「市水」の供給が停止してもその影響を受けることなく血液透析を行なうことが出来ます(大型浄化装置を動かす非常用発電設備も所有しています)。

血液透析は、必ず継続しなければ、命に関わる治療です。

 当院では災害等が発生しライフラインの供給が途絶えたとしても、血液透析が継続できるように体制を整備・強化してきました。この対策は透析治療において地域の中核的な役割を担う病院の責任として、当院の患者さんのみならず、この地域の全ての透析患者さんのとっても、とても重要で有益だと考えています。

 今後も当院透析センターでは、医師、看護師、臨床工学技士と3職種が連携し、患者さんに最善の医療を提供できるように努力してまいります。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 臨床工学技士

掲載日:2023年2月20日

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