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看護場面とナイチンゲールの『看護覚え書』その3

 「看護覚え書」はフロレンス・ナイチンゲールによって1859年に書かれた「Notes on nursing : what it is, and what it is not 」の完訳で、現在も看護の思想の原点としてすべて看護を学ぶ者の必読書と言われています。

 このコラムは当院看護師が実際の看護場面を振り返り、「ナイチンゲールの『看護覚え書』」と照らし合わせた学びをご紹介します。

シーン
-廊下でのささいな会話

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患者の希望で部屋移動をしたため、受け持ち看護師として自分が関わることがなくなったが、廊下を歩いている姿を見かけたため声をかけて挨拶をした。患者からも挨拶が返ってきた。その時に今までは笑顔で話しをすることが多かったが表情が暗いと感じたため、患者へ「何かありましたか」と声をかけた。すると患者から「頭が痛くて検査することになった。脳転移でなければいいと思って、不安なの」と話された。脳転移については検査をしなければわからないため、「まずは検査をしてみましょう」と伝えると「そうだね。声をかけてくれてありがとう」と返答があった。

検査が終わった数日後、ふたたび患者へ声をかけたところ、「脳腫瘍に対して放射線療法をすると先生に言われた」と話していた。脳腫瘍に対して放射線をかけることで、頭痛などの症状が緩和されることなどを伝えると「そうなんだってね。でも不安で。」と話されていた。不安については緩和ケアチームもあり、不安な気持ちを相談できることを伝えたところ、「娘にも言われた。今までは、いろいろ情報を調べすぎると、余計に不安になると思って、先生の言う事だけ聞いて信じてきたの。でも、緩和ケアチームの話を聞いてみようと思って。」と話されていた。

看護師の振り返り

担当看護師として関わってきたが、患者が自らの病状や治療法を調べてるうちに、強く不安に思っていることは気づけなかった。廊下で声をかけたことをきっかけとして、患者の思いを知り、その思いを聞くことができた。

-ナイチンゲールの看護覚え書より

患者の顔に現れるあらゆる変化、姿勢や態度のあらゆる変化、声の変化の全てについて、その意味を理解≪すべき≫なのである

また看護師は、これらのことについて、自分ほどよく理解しているものはほかにはいないと確信が持てるようになるまで、これらについて探るべきなのである。

一方、患者の表情や様子を何ひとつ観察しようとしない看護師や、また何か変化がありはしないかと思いもしないような看護師は、まるで壊れやすい陶磁器の管理をしているようなもので、何も得られない道を歩みつづけ、けっして看護師にはなれないであろう。

引用 F.ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年 pp228

今回の学び
-変化の意味を読み取る能力

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 看護部

掲載日:2023年3月20日

出典

フロレンス・ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年

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