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在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)について

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普段私たちは、呼吸によって酸素を肺に取り入れ、二酸化炭素を吐き出しています。酸素はエネルギー代謝の上で非常に重要な役割を担っています。また、運動しているとき、寝ているときもエネルギーは常に消費していますので、酸素は私たちが生きるうえで、非常に大切です。

酸素が不足するとは?

COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性期の呼吸不全や心不全等によって、体の中で酸素がうまく取り入れられない状態になると、息切れなどの呼吸困難の発生、心臓への負担増加といった様々な症状が出現します。

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在宅酸素療法(HOT)とは?

呼吸の状態が一定以上に悪化すると、在宅酸素療法が適応となります。在宅酸素療法とは、在宅(自宅や病院以外)で高濃度の酸素を投与する治療法のことで、英語でHome Oxygen Therapy といい、頭文字をとって「HOT(ホット)」と呼んだりします。

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在宅酸素療法に期待できる効果

1. 運動時の息切れなど、労作時の呼吸困難の軽減

2. 低酸素状態が改善し、肺や心臓などの臓器の負担軽減

3. 入院生活から自宅療養が可能となり、生活の質(QOL)の改善

使用機材について

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酸素濃縮器

空気の大半をしめている窒素を吸着して、濃度の高い酸素を作り出す装置、家の中に設置して使用します。電源供給があれば、常時使用可能です。

~特徴~
・ 家の中に固定して使用 (重量、約20kg)
・ 電源が必要 (停電時使用不可)
・ 定期的なお手入れが必要 (フィルター清掃等)
・ ヒーターやストーブから2m以上離す (火災防止)
・ 自宅への設置は、担当業者が施行 (設置場所の安全性の確認等)
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携帯用酸素ボンベ

携帯性に優れ、外出時や通院時に使用します。容量があり、残量に注意します。電源は必要としないため、停電時にも使用できます。

~特徴~
・ 携帯性に優れている (外出時や通院時に使用)
・ 容量があるため、残量に注意 (設定流量等で時間変動)
・ 電源を必要としない (停電時も使用可能)
・ 専用カートとバッグに収納
・ 補充は、担当業者が実施
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注意事項について

1. 火気厳禁

使用者だけではなく、周りの人も酸素濃縮器、酸素カニューレ、酸素ボンベ付近での火気の使用はしないでください。酸素使用中にタバコは吸わないでください。(酸素は支燃性ガスです、火気の使用は厳禁)

2. 携帯用酸素ボンベの残量に注意

携帯用酸素ボンベを使用する前に、必ず酸素の残量を確認しましょう。もし残量が少なければ、残量がある酸素ボンベと交換するか、2本以上酸素ボンベをもって外出しましょう。

3. 酸素カニューレの亀裂や折れ曲がり

酸素カニューレに亀裂や穴が開くと、穴から酸素がでてしまい、流れてくる酸素の量が少なくなります。酸素カニューレに折れ曲がりがある場合は、酸素の流れが止まります。

おわりに

これまで在宅酸素療法について、紹介をしていきました。酸素を吸入することで、歩行困難や息切れなどといった負担軽減への期待。酸素療法を病院ではなく自宅で受けられることは、生活の質(QOL)の向上につながると感じています。

病院と担当業者が連携して、ひとりひとり患者さんのサポートを行っていますので、何か不安なところやお悩み等がございましたら、当院のスタッフへご相談ください。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 臨床工学技士

掲載日:2023年5月10日

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