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看護場面とナイチンゲールの『看護覚え書』その5

 「看護覚え書」はフロレンス・ナイチンゲールによって1859年に書かれた「Notes on nursing : what it is, and what it is not 」の完訳で、現在も看護の思想の原点としてすべて看護を学ぶ者の必読書と言われています。

 このコラムは当院看護師が実際の看護場面を振り返り、「ナイチンゲールの『看護覚え書』」と照らし合わせた学びをご紹介します。

シーン
不眠を訴える患者

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深夜1時の巡視をしていた際に、覚醒していた患者がいたため声をかけたー

「眠れない」と話されていたので、どうして眠れないのか尋ねると、「管※1が入っているところが痛くて眠れない」と訴えがあったため、疼痛時指示薬を使用した。また呼吸も苦しそうであったため、眠りやすいように体位変換枕※2で体位を整えた。

 3時の巡視の際は眠っていた。朝、患者に昨夜のことを聞いてみると「夜だし、看護師さんも休んでいるだろうと思って、少しぐらいなら我慢しようと思っていたんだ。ぐっすり眠れたよ。ありがとう」と話された。

*1 胸腔ドレーン…疾患や手術によって胸腔内に貯留した液体(血液、胸水、膿など)や気体を胸腔外へ排除することで、肺の拡張を促すこと、および胸腔内の情報を得ることができる。参考:ナース専科 胸腔ドレーンの目的と挿入部位・排出メカニズム

*2 体位変換枕…体位変換枕自己での体位変換が困難な時、体位変換を行ったうえでその体位が維持できるように体を支える枕のこと。引用:ナース専科 看護用語集 体交枕

看護師の振り返り

-ナイチンゲールの看護覚え書より

患者というものはたいへん内気で、こうしたことを自分から話し出せないものなのである。

患者が自分で身体を動かさないですむために看護師は存在する、と一般に考えられているようであるが、私はむしろ、患者を自分について思い煩うことから解放するために看護師が存在すべきであると言いたい。すなわち、身体を動かす努力に全てから免れるのでは≪なく≫、自分自身について思い煩うことのすべてから解放されていれば、患者は良くなっていくに違いないと私は確信している。

思慮のない看護師は「何か私にできることがありますか?」と質問する。(中略)このような質問は、うわべは「親切」そうに見えながら、実は看護師の側の一種の怠慢にほかならない。

引用 F.ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年 pp186-187

今回の学び
-観察から患者の要望を見極める-

看護師に気を使って苦痛でさえも自ら話せない方がいるため、声をかけていくことの必要性について再認識した。また、患者が安楽に過ごせる環境を提供するための配慮ができるように気づいていきたいと思った。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 看護部

掲載日:2023年8月31日

出典

フロレンス・ナイチンゲール 著『看護覚え書』湯槇ます・薄井坦子・小玉香津子・田村真・小南吉彦 訳・現代社・第7版・2011年

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