【医療コラム】「心臓ペースメーカ」の今を知る
心臓ペースメーカ(以下、ペースメーカ)は、脈拍が遅くなる病気の治療に用いられる医療機器です。ペースメーカ本体と、本体で発生した電気刺激を心臓へ伝えるリードで構成されます。
1958年にペースメーカを植え込む最初の手術が行われました。それから60年以上の年月が経ち、どのようにペースメーカが進化したのか、ペースメーカの特徴と共に臨床工学技士の視点からご紹介します。
心臓ペースメーカ(以下、ペースメーカ)は、脈拍が遅くなる病気の治療に用いられる医療機器です。ペースメーカ本体と、本体で発生した電気刺激を心臓へ伝えるリードで構成されます。
1958年にペースメーカを植え込む最初の手術が行われました。それから60年以上の年月が経ち、どのようにペースメーカが進化したのか、ペースメーカの特徴と共に臨床工学技士の視点からご紹介します。
心臓は微弱な電気の流れで拍動しています。心臓内の洞結節(どうけっせつ)と呼ばれるところから電気刺激が発生し、心臓内の電気回路を流れることで規則正しく拍動することができます。
心臓は通常1分間に60回程度拍動しますが、この洞結節や心臓内の電気回路に異常をきたすことで、心拍数が少なくなることがあります。
心拍数が異常に少なくなる徐脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)では、全身や脳に循環する血液の量が少なくなることで、めまいや息切れ、疲れやすさや失神などの症状を起こすことがあります。
ペースメーカは心臓の拍動が遅くならないように、心臓に電気刺激を送ることで徐脈性不整脈を改善します。
進歩 1:条件付きで「MRI検査」が受けられる様になった
ペースメーカ手術を受けるとMRIで利用される磁場や電磁波がペースメーカにトラブルを起こすため、MRI検査を受けられないという問題がありました。
2012年より、「条件付きMRI対応ペースメーカ」が使用できるようになり、事前の準備や一定の条件を満たせば MRI検査を実施することが可能になりました。
※全てのペースメーカー患者さんが検査を受けられる訳ではありません。必ず通院中の医療機関のご案内に沿ってください。
進歩 2:リードレスペースメーカの登場
リードはペースメーカ本体から発生した電気刺激を心臓へ伝える電線の役割を果たしています。このリードを無くし、機器本体を直接心臓内に植え込む、リードレスペースメーカが2017年に登場しました。
リードレスペースメーカの特徴は、ペースメーカ本体を植え込むための皮下ポケットを作る必要がないため、感染症リスクを抑えることができ、加えて断線などのリード特有のトラブルが発生しないメリットがあります。
進歩 3:遠隔モニタリングの登場
ペースメーカを植込みされている方は、定期的に外来通院する必要があります。この外来ではペースメーカの電池残量や動作に問題がないかを専用の装置を用いて確認しています。
「病院に来院しないとペースメーカの動作状況を確認できない」「ペースメーカに何らかのトラブルがあっても、即座に確認することができない」などの問題を解決するのが遠隔モニタリングという機能です。
遠隔モニタリングは、ペースメーカの情報を携帯電話回線などを利用して医療機関へ送る仕組みです。これにより、患者さんが来院しなくても、私たち医療従事者はペースメーカの動作状況を確認できるようになりました。
※ 遠隔モニタリング機能は緊急対応のシステムではありません。また、外来通院が不要になるわけでもありません。
どんなに医療機器が発達しても、それらをよく理解し安全に提供することが必要です。私たち臨床工学技士は、病院の様々な職種や開発企業と連携し、これからも安全・安心の医療を提供して参ります。
執筆者:函館五稜郭病院 臨床工学技士
掲載日:2024年7月20日