【医療コラム】透析治療で用いられる「水」の管理について
臨床工学技士が行う仕事の一つに血液浄化療法があります。血液浄化療法の代表的なものに血液透析があり、腎臓の機能を代行するため腎代替療法と言われています。血液透析で使用する透析液は当院では透析センター内で作成し、そこで用いられる「水」は患者さんの治療に直結する重要なものになります。
本コラムでは透析治療で用いられる「水」の管理についてお話します。
臨床工学技士が行う仕事の一つに血液浄化療法があります。血液浄化療法の代表的なものに血液透析があり、腎臓の機能を代行するため腎代替療法と言われています。血液透析で使用する透析液は当院では透析センター内で作成し、そこで用いられる「水」は患者さんの治療に直結する重要なものになります。
本コラムでは透析治療で用いられる「水」の管理についてお話します。
当院で超純水(透析治療で用いられる透析液を作るための水)ができるまでの工程を図1に示します。
原水をフィルタや各種装置を通過させることで「超純水」を作成しています。
ROモジュールだけでも十分な超純水にすることはできますが、当院ではさらに奇麗な水を作成するためにEDIという特殊な装置を使用し清浄化しています。また、当院では常水として井戸水を活用しており、井戸水専用の大型浄化装置を地下に設置・清浄化されたものを原水として使用しています。
当院では、患者さんの体から体外に導き出した血液に直接透析液を注入するonlineHDFという治療を多く行なっています。透析液中に有害物質である細菌やエンドトキシンが含まれていると、発熱や炎症等の原因となり時に重大な合併症を引き起こします。
それらの有害物質を完全に取り除くために「エンドトキシン補足フィルタ」という専用の膜も設置しています。(図2)
また、作成した透析液に有害物質が含まれていないことを確認、証明するために毎月水質検査を実施しています。
当院では、日本透析医学会(以下、JSDT)が示す、透析液水質基準に準じた科学的・生物学的汚染基準未満になる様、厳格に水質管理をしています。
図5と図6は生菌検査とエンドトキシン検査の風景です。
生菌検査では、水処理装置(図1)で作られた超純粋や透析液内に細菌が存在していないことを確認します。
それぞれの装置から採液した水を専用のメンブランフィルターに通し、恒温槽で培養します。一週間後、メンブランフィルターのコロニー数を肉眼で計測します。(図7)
エンドトキシン検査は、採液を専用の容器にいれ専門の検査会社に依頼し、エンドトキシンの有無を調査しています。
これらの検査以外にも、透析液水質中に残留塩素が含まれていないか等も日々検査しています。
私たち臨床工学技士は、血液透析で使用される超純水・透析液の水質を汚染なくきれいに保つため、透析関連機器の保守管理・点検を行っています。
このような管理業務は、日々治療を受けられている患者さんの目からは見えないところかもしれませんが、安全な透析治療を継続的に提供するために縁の下の力持ちとして日々努めております。
・編著公益社団法人日本臨床工学技士会・監修一般社団法人日本透析医学会「2016年版透析液水質基準達成のための手順書Ver1.01」2017年7月24日
執筆者:函館五稜郭病院 臨床工学技士
掲載日:2024年10月10日