函館五稜郭病院

函館五稜郭病院 > 医療コラム > 【医療コラム】パーキンソン病とリハビリ

【医療コラム】パーキンソン病とリハビリ

img

 パーキンソン病は進行性の神経変性疾患で、国が指定する難病として知られています。多くの場合、中高年以降に発症し、日常生活に様々な影響を与えます。そんな中、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)維持・向上できるよう、病態を知り、リハビリを行うこと、環境を整えていくことが重要です。

パーキンソン病の症状について

パーキンソン病の症状は、運動・非運動の2つの症状に区別されます。

img

運動症状

振戦 じっとしている時に手足がふるえてしまう
無動 素早く動けない、動きだせない
筋強剛 筋肉が硬く、こわばる
姿勢反射障害 ふらつきやすく、バランスがとりにくい

非運動症状

自立神経症状 便秘・頻尿、立ち眩み など
睡眠障害 不眠、眠りが浅くなりやすい
精神症状 気分の落ち込み、不安
疲労 疲れやすい

リハビリがなぜ必要?

 パーキンソン病は脳内の神経伝達物質であるドーパミンの減少によるものです。特に中脳の黒質と呼ばれる領域でドーパミンを生成する神経細胞が減少することで身体が動きにくくなったり、手足が震えたりと様々な症状が出てきます。

そのため歩くことに対してや、立ち座りに支障をきたすことが多くなってきます。その症状の進行を遅らせる方法のひとつとして、ADLを改善するために身体機能の維持・向上を図るリハビリが重要となってきます。

img

リハビリの方法

①ストレッチ

こわばった筋肉を柔らかくします。15~30秒を目安に実施しましょう。

②筋力トレーニング

姿勢を保つ、歩くことに重要な足腰を中心とした運動を行います。一つの運動を10~20回、1~2セット実施してみましょう。

③バランス練習

姿勢を保つための練習を行います。「気を付け」の姿勢から、まずは10秒を目安に、20秒、30秒…と続けてみましょう。

④歩行練習

平地や屋外で歩く練習を行います。有酸素運動を取り入れることで体力をつけることにも繋がります。まずは近所を5分、10分を目安に行いましょう。

⑤呼吸練習

深呼吸を行い胸郭を広げやすくし、呼吸法を身に着けていきます。続けて実施すると苦しくなる恐れもあります。1~2回実施、休憩…と休みを挟みながら行いましょう。

⑥嚥下練習

口や下の運動を行います。大きな声やはっきりした発声を行います。

 自宅でリハビリを行う場合、場所を整えることも非常に重要です。運動中に転倒するリスクを減らすために、周囲の家具や物を片付け、広い空間を確保しましょう。またフローリング上に靴下…という滑りやすい状況ではなく、安定した状態で運動を行うようにします。支えが必要な場合は、テーブルなどしっかりと安定したところで行うことをお勧めします。

 パーキンソン病では治療に使用される薬の効果が一定しないために、「オン/オフ現象」が発生します。リハビリを効果的に行うためには、体がよく動く時間帯を選ぶことが重要です。

 リハビリは進行予防や身体機能の維持に効果的であり、継続することが大切となってきます。無理は決してせず、その日の体調や疲れやすさなど症状に合わせて行いましょう。

参考文献

・久永 欣哉,高橋 信雄「パーキンソン病のリハビリテーション」Jpn J Rehabil Med 2012 ; 49 : 738.745

・中西 亮二,山永 裕明,野尻 晋一,出田 透「パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション」 Jpn J Rehabil Med 2013 ; 50 : 658.670

・難病情報センターホームページ「パーキンソン病(指定難病6)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/314

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 リハビリテーション科

掲載日:2024年12月20日

page top