【医療コラム】いざという時の備えは出来ていますか?~災害時の栄養について~
近年国内では自然災害が多く発生しています。みなさんはいざという時の備えは出来ていますか?今回は災害時の食事・栄養補給に関するポイントをお伝えしたいと思います。
近年国内では自然災害が多く発生しています。みなさんはいざという時の備えは出来ていますか?今回は災害時の食事・栄養補給に関するポイントをお伝えしたいと思います。
一般的に災害は、発災から復興終了までの5つのフェーズ (超急性期、急性期、亜急性期、慢性期、平穏期) に分類されます。これを災害サイクルと呼びます。
災害時の食事・栄養補給の支援は、災害サイクルにおける超急性期(フェーズ0)から慢性期(フェーズ3)に移行するごとに内容が変わります。
①超急性期・急性期(フェーズ0~1)
※概ね発災後24時間以内、概ね発災後72時間以内)
【水分補給とエネルギー確保】
避難時は体力が落ちやすい状態となっているため、しっかりとエネルギーを確保し、体力の回復・維持を優先していくことが重要です。また慣れない環境に置かれると水分摂取に気が回らず摂取量が減ってしまうことがあるため意識して水分補給をしましょう。
②亜急性期(フェーズ2)
※概ね発災後4日目〜1ヶ月)
【たんぱく質を中心にビタミン・ミネラルの補給を増やしていく】
被災から1週間程度は、備蓄食やレトルト食品などの食品が中心となるため、炭水化物過多となり、たんぱく質やビタミン・ミネラルが不足することが想定され、炊き出しやお弁当への移行が重要となります。
③慢性期(フェーズ3)
※概ね発災後1ヶ月以降)
【徐々に日常の食事に戻しバランス良く食べられることを目指す】
炊き出しやお弁当は味が濃い料理や揚げ物中心になってしまい、塩分・脂質過多が課題となります。健康な方でも健康障害が起こるリスクが高まり、疾患を持っている方は症状を悪化させる可能性もあります。状況にもよりますが、出来る限りバランスの整った食事が望まれます。
食料の備蓄は最低3日分、できれば1週間以上を備蓄することが推奨されています。乳幼児・高齢者、食物アレルギーや慢性疾患の方がいる家庭では日頃から家族の状況にあった食品を備えておくことも大事です。
非常食の一例
・炭水化物を多く含む食品
パックご飯、非常食用パン、シリアル、カンパン、春雨スープ
・たんぱく質を多く含む食品
肉(焼き鳥・コンビーフ)・魚(鯖・ツナ)などの缶詰、常温保存可能な豆腐・牛乳
・脂質を多く含む食品
ミックスナッツ、クッキー、チョコレート
・ビタミン、ミネラルを多く含む食品
乾燥野菜、野菜・果物の缶詰、ゼリー飲料
※上記以外にも、総合栄養食品、経口補水液・スポーツドリンク、マルチビタミン・ミネラルのサプリメントも用意しておくと良いでしょう。
災害後は食品の種類に偏りが生じることから、栄養面での問題が起こりやすくなります。また、水分不足やストレスによる過食・食欲低下など普段とは異なった問題が発生しやすいと言えます。災害時は様々な問題が起こることを想定しておくとともに、いざという時のために備えておくことが大切です。
執筆者:函館五稜郭病院 管理栄養士
掲載日:2025年9月10日