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診療内容の紹介 小児科
-子どものアレルギーについて-

はじめに

 近年では大人から子どもまで多くの方がアレルギー疾患に悩まされており、平成26年にアレルギー疾患対策基本法が制定され、国としても対策に取り組む時代になりました。アレルギーになりやすい体質を持つ人が、成長に伴ってさまざまなアレルゲンと呼ばれる物質(ダニ、食品、花粉、動物など)と接触することにより、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎/花粉症を発症していく傾向があり、このように年齢とともにアレルギー疾患が形を変えて現れてくることは「アレルギーマーチ(行進)」と呼ばれます。このアレルギーマーチの進行を予防する上でも、乳幼児期からの適切な診断と治療が重要と考えられています。

アレルギーの発症予防とスキンケア

 アレルギー反応は、免疫機能(外敵から自らを守る機能)が過剰に働くことで発症します。近年、外敵と体の免疫細胞が出会う場として皮膚の重要性が知られてきました。皮膚は人体最大の臓器であり、外界から身を守る防御壁のような役割を担っています。皮膚に湿疹がある(=炎症が起こる)と、防御機能が脆くなり、そこに環境にある様々なアレルゲンが触れることで、免疫細胞を過剰に刺激します(経皮感作と呼ばれます)。アレルギー疾患の発症にはこの経皮感作が大きく関わることがわかっていますが、近年では乳幼児期から適切なスキンケアと湿疹の治療を積極的に行い、皮膚の防御機能を良い状態に保つことで、その後のアレルギー疾患の発症を予防できる可能性が報告されています。当院では、乳幼児期からの具体的なスキンケアの方法をお伝えし、必要に応じた湿疹の治療を行います。

アトピー性皮膚炎の治療

 アトピー性皮膚炎とは、痒みのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返し、数ヶ月間以上の長期間にわたって続く疾患です。小さな子どもに発症しやすく、0〜3歳の年代では、概ね10〜15%の子どもにアトピー性皮膚炎の症状があると報告されています。原因としてはアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因と呼ばれます)が関わりますが、妊娠中の食生活や生活習慣の影響はないと考えられています。アトピー素因を持つ子どもは皮膚のバリア機能が不十分なため、日常生活の些細な刺激で湿疹を起こします。そのため、湿疹は繰り返しやすく、治りが悪く、痒みが強いことが特徴となります。

 治療の主体は「湿疹を適切に治療すること(ステロイド外用薬を中心とした薬物療法)」「毎日のスキンケア(皮膚のバリア機能の維持)」「悪化要因の対策」の三本柱となります。湿疹は皮膚の炎症で、アトピー素因のある人は湿疹を起こしやすい体質がありますので、①まず炎症を徹底的に鎮める(寛解導入療法)、②再び炎症が起こらないように維持する(寛解維持療法)、という段階を踏んだ治療が重要です。ステロイド外用薬は皮膚の炎症を鎮めるための中心となる薬ですが、適切な塗り方ができるかどうかで治療効果が大きく変わってきます。皮膚の状態に合わせて薬の強さ、塗る量、塗り方、塗る期間を決めていきますが、湿疹の繰り返しを防ぐためにも継続した診療が重要となります。早期に湿疹を鎮めることができれば、その後は保湿スキンケアを中心とした対応で悪化、再燃を防ぐことができます。当院では、皮膚や痒みの状態を評価して、段階を踏んだ治療方針をご提案します。

食物アレルギーの診断・治療

 食物アレルギーの発症には、湿疹のある皮膚からの刺激(経皮感作)が重要である一方で、食物を口から食べて腸から吸収した場合、このような過剰な免疫反応は抑えられることがわかっています(経口免疫寛容と呼ばれます)。食物アレルギーの予防と治療では、アレルギーを疑う食物を除去するのではなく、除去は必要最小限にとどめ「安全な量を食べ続けること」が重要と言えます。

 食物アレルギーの診断で最も重要なことは「詳細な問診」です。食物アレルギーと紛らわしい症状も多いため、「何を、どんな調理法で、どのくらいの量を食べたら、どのくらい時間が経った後に、どんな症状が出たか」について、詳しくお話を伺います。問診に加え、血液検査や皮膚テストを行うことも多いですが、これらの検査結果からは「今後も症状が出るのか」「どのくらいの量を食べると症状が出るのか」について正確な判断はできません。そこで、食物経口負荷試験(実際にアレルギーが疑われる食品を、医師の観察下で食べる試験)が重要となります。

 食物経口負荷試験では、食物アレルギーが疑われる食品を実際に食べてもらうため、一定の割合でアレルギー症状が出現します。アレルギー症状はかゆみやじんましんなどの軽度の症状で済む場合もありますが、アナフィラキシーと呼ばれる急速に進行する重篤な症状(呼吸困難、意識障害、循環不全などの全身症状)が起こるリスクもあります。当院では、症状が起こった場合にも迅速に適切な治療ができるよう、原則として日帰り入院で食物経口負荷試験を行います。食物経口負荷試験においても日常生活においても、食べる量が多ければアレルギー症状を起こす可能性は高まりますが、近年では食べる量は少量でも、食べ続けることで食物アレルギーの改善が期待できることが報告されています。当院では、食べる量の設定も含めて安全に配慮した食物経口負荷試験を行い、お子さんやご家族と相談しながら、安全な量を楽しんで食べ進める治療をご提案します。

 その他、繰り返す咳やゼーゼー、鼻水、目の痒みなどで「喘息かな?」「鼻炎・結膜炎かな?」「何かのアレルギーかな?」とご心配な場合、じんましんなどの子どもの皮膚トラブルのご相談、離乳食や食事に関わるご相談にも対応致します。お気軽にお問い合わせください。

担当医:鈴木雅彦(小児科専門医、国立成育医療研究センター小児アレルギー診療短期重点型研修修了)

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