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シリーズ 睡眠でお困りの方へ
-第4回 睡眠薬について-

 今回は睡眠薬の種類と、それぞれの特徴や注意点についてお話しします。睡眠薬が処方されている方は、ご自身の睡眠薬がどれに該当するか確認し、適正使用のための知識としていただければ幸いです。

1.ベンゾジアゼピン受容体作用薬

商品名 成分名
アモバン ゾピクロン
エバミール ロルメタザパム
サイレース フルニトラゼパム
ソメリン ハロキサゾラム
ダルメート フルラゼパム
デパス エチゾラム
ドラール クアゼパム
ハルシオン トリアゾラム
ベンザリン ニトラゼパム
マイスリー ゾルピデム
リスミー リルマザホン
ルネスタ エスゾピクロン
レンドルミン ブロチゾラム
ユーロジン エスタゾラム

特徴

睡眠作用の他に、抗不安作用や筋弛緩作用を併せ持ちます。

注意点

自己中断すると「離脱症状」が出現するため、お薬を止める際には医師の指示のもとで徐々に減らす必要があります。
筋弛緩作用によって、ふらつきや転倒の危険性が高まります。
長期的に使用していると、認知機能への影響や依存性が懸念されています。

薬剤師からのコメント

この系統のお薬は強い催眠作用を持っています。作用が持続する時間もそれぞれなので、不眠の種類に応じて使い分ける必要があります。
しかし、転倒やせん妄、認知症のリスクを増やしたり、依存を形成したりするため、睡眠の問題が改善したら少しずつ減量して中止していくお薬です。

2.メラトニン受容体作動薬

商品名 成分名
ロゼレム ラメルテオン

特徴

体内時計を調整して、自然な眠りを誘います。
認知機能への影響や、依存は少ないとされています。
せん妄の予防効果もあります。

注意点

お薬の効果が出てくるまでに1~2週間程度かかることがあります。

薬剤師からのコメント

このお薬は睡眠薬の中では新しいお薬です。ベンゾジアゼピン受容体作用薬と比べて、抗不安作用はないものの、依存性の形成や認知機能への影響も少ないため、高齢の方にも比較的安全に使用できる薬と言えます。

3.オレキシン受容体拮抗薬

商品名 成分名
デエビゴ レンボレキサント
ベルソムラ スボレキサント

特徴

覚醒力を弱めて、入眠を促します。
抗不安作用、筋弛緩作用、依存性は少ないとされています。

注意点

悪夢などの副作用を生じることがあります。

薬剤師からのコメント

このお薬もメラトニン受容体作動薬と同様に、睡眠薬の中では新しいお薬です。安全性が高いことから、高齢の方にも比較的安全に使用することができます。

市販の睡眠薬について

市販されている睡眠薬には、今回お話ししたお薬の成分が含まれているものはありません。
「アレルギーの薬は眠くなる」と耳にしたことがある方も多いかと思いますが、実は市販の睡眠薬は抗アレルギー薬のジフェンヒドラミンの副作用である“眠気”を利用したものです。
依存性や離脱症状のリスクが低いため、薬局やドラッグストアでも販売されています。

漢方薬について

次の漢方薬には不眠症に効くとされています。
  • 大柴胡湯(だいさいことう)
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  • 抑肝散(よくかんさん)
  • 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
どれも自律神経を安定させることで、睡眠の質を高めます。
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされており、比較的安全性が高いため小児から高齢者まで幅広く使用できます。
しかし、多量に摂取したり長期間の服用は肝臓や腎臓に負担をかけてしまい、副作用が出てしまうこともありますので、用法・用量は必ず守る必要があります。

終わりに

睡眠薬の中には注意が必要なものもありますが、医師の指示通り正しく使用すればどのお薬も非常に良い効果を発揮します。睡眠薬を使用していく中で、中止を希望される場合や、副作用などの問題が生じた際はお気軽に医師・薬剤師へお伝えください。

睡眠について解説した動画を公開中です!詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 薬剤師

掲載日:2023年3月30日

参考文献・引用など

・睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(厚生労働省科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ)

・第3版 睡眠障害の対応と治療ガイドライン(内山真 編 ,じほう)

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