シリーズ ウィズコロナ時代を生きるためのバイオロジー-第2回 ウイルスが感染する仕組み-
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について、バイオロジー(生物学)の観点から、一般の方にも分かり易く解説していくコラムシリーズ。第2回は、ウイルスがどうやって私たちの体に感染していくかをご紹介します。
図1は大腸菌です。大腸菌内部にはさまざまな部品がつまっていて、基本的にわたしたちの細胞ととてもよく似ています。右下のオレンジ色のひも状のものが複製するための設計図、DNAです。栄養源さえあれば、自分自身で複製することができます。
図2はウイルスが細胞に感染する様子を表しています。ウイルスが丸ごと細胞のなかに侵襲するのではなく、ウイルスの殻と細胞を被う細胞膜(薄緑色)とが一体化し、細胞のなかに設計図(コロナウイルスの場合RNA;紫色)を送り込みます。ウイルスは設計図だけを殻のなかに容れていて、自分自身を複製するために必要な部品を持っていません。細胞に送り込んだ設計図と細胞がもともと持っている部品を使って殻(桃色)を複製します。ウイルスにとって細胞は、自分自身を複製するための工場です。ウイルス単独では複製することができません。細菌なり、細胞なり、部品を提供してくれる工場が必要です。
執筆情報
執筆者:函館五稜郭病院 がんゲノム医療センター 池田 健
掲載日:2022年10月21日
参考文献等
・Molecular Landscapes by David S. Goodsell. https://pdb101.rcsb.org/sci-art/goodsell-gallery