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診療内容の紹介~臨床遺伝科の詳細~

はじめに

ミトコンドリア病、小児内分泌・代謝・糖尿病疾患、腎疾患、神経筋疾患など遺伝性疾患を中心に久留米大学と福岡大学で20年以上、希少疾患の診療を経験してきました。道南地域でも引き続き希少疾患の診療に貢献していきます。
臨床遺伝科 八ツ賀 秀一

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ミトコンドリア病

ミトコンドリアは体内でATP(エネルギー源)を産生する小器官です。ミトコンドリアの中には、ミトコンドリアDNA(遺伝子)があります。このミトコンドリアDNAにバリアント(変異;キズが入ること)があるとミトコンドリア病を発症する可能性があります。ミトコンドリアDNAは母の卵子から遺伝します(母系遺伝)。

一方、ミトコンドリアは核DNAからの影響も受けます。核DNAにバリアントがあってもミトコンドリア病を発症する可能性があります。核DNAは母の卵子や父の精子から遺伝します。

ミトコンドリア病は、胎児、乳児、小児、成人までいつでも発症し、症状も発達の遅れ、筋緊張低下、筋力低下、頭痛、低身長、糖尿病、難聴など全身に出現し多彩です。代表疾患として、リー脳症、MELAS(ミトコンドリア脳筋症)、MIDD(ミトコンドリア糖尿病・難聴)、CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺)などがあります。

治療は対症療法となりますが、タウリン、アルギニン、ビタミンカクテル療法が一般的です。

低身長

低身長は、成長曲線の-2SD以下の状態をいいます。同じ誕生日、性別の児を100人集めたら約2人は-2SD以下になります。そのうち約10%が、低身長を来す疾患があり、治療可能なものがあるといわれています。残り約90%は体質的なもので治療が難しく経過をみていくことになります。

原因は、成長ホルモン分泌不全性低身長症、SGA性低身長症、ターナー症候群、甲状腺機能低下症(橋本病)など多岐にわたります。

治療は成長ホルモンの補充投与です。

高身長

高身長は、成長曲線の+2SD以上の状態をいいます。同じ誕生日、性別の児を100人集めたら約2人は+2SD以上になります。多くは体質性(原因不明)ですが、中には成長ホルモン分泌過剰、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、クラインフェルー症候群など多岐にわたるものもあります。

肥満・体重過多

小児では、身長、年齢、性別から標準体重を計算した肥満度を使用し、肥満度0%が平均的体格です。-20〜+20%が正常で、+20%以上を肥満といいます。体重が増える病気もありますが、多くは食事摂取過多、運動不足が原因です。

小児でもメタボリック症候群が増えており、肥満予防ならびに治療が重要とされています。出生時に在胎週数に比し小さく生まれたSGA児では、肥満度が高くなくても肝機能障害を起こしていることが多くあり注意が必要です。

治療は(認知)行動療法を行います。

やせ

-20%以下の肥満度をやせといいます。体重が減る病気もありますが、体質的に太れない人もいます。やせの原因として、神経性やせ症(摂食障害)、脳腫瘍、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などがあります。

思春期疾患

思春期は、適正な年齢になると、多くの女児は乳房腫大から、男児は精巣腫大から開始します。女児の思春期年齢は、7歳6か月から13歳までに、男児の思春期年齢は、9歳から14歳までに起こると正常です。

女児では、7歳6か月より前に乳房腫大、8歳より前に陰毛発育、10歳6か月より前に初経がおこること、男児では、9歳より前に精巣腫大、10歳より前に陰毛発育、11歳より前に変声がおこることを思春期早発症といいます。原因の多くは体質性(原因不明)ですが、まれに脳腫瘍などがあるため精査が必要です。

治療は場合によっては思春期を止める薬を使うことがあります。逆に、女児で13歳を過ぎても乳房腫大がない、男児で14歳を過ぎても精巣腫大がない場合を思春期遅発症といいます。

原因は体質性もありますが、様々な疾患によるものあり精査が必要です。

甲状腺疾患

首の前方に甲状腺という小さな器官があり、甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンが減っても増えても、甲状腺が腫れて首の前部分が大きくなることがあります。代表的疾患は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)があります。

下垂体疾患

頭蓋骨のちょうど真ん中あたりに約1cm程度の小さな下垂体があります。ここでは、多くのホルモン分泌を調節しており、脳腫瘍や炎症があると様々な症状を引き起こします。成長ホルモン、思春期、甲状腺などに影響を与えます。また抗利尿ホルモンが不足すると、多飲多尿となります。

副腎疾患

副腎はステロイドホルモンを作る場所で、体内の塩分、血糖、ストレスの調整をしています。生まれつきステロイドホルモンが不足している疾患(21水酸化酵素欠損症など)や、腫瘍でステロイドホルモンが過剰になっている疾患(クッシング症候群など)があります。

骨系等疾患・骨代謝疾患

主に骨にかかわる先天的な疾患について、適切な診断/治療を行います。

骨折しやすい骨形成不全症、全身の骨痛、筋痛を伴う低ホスファターゼ症、O脚/X脚になりやすいFGF23関連低リン血症性くる病やビタミンD欠乏性くる病、生まれつき四肢が短い軟骨無形成症などの骨系等疾患など。診療は整形外科や脳神経外科など必要に応じて共診します。

神経筋疾患

生まれつき筋力が弱かったり、徐々に筋力が落ちてくる疾患の診断/治療を行います。

必要に応じて筋生検を施行します。デュシャンヌ型や福山型などの筋ジストロフィー、ネマリンミオパチーなどの先天性ミオパチーなどが挙がります。呼吸器内科、神経内科、リハビリ科など必要に応じて共診します。

糖尿病

糖尿病には、インスリンが不足する1型、インスリンの反応が十分できない2型、遺伝子異常によるMODY(若年発症成人型糖尿病)やMIDD(ミトコンドリア糖尿病)などがあります。小児では1型が多いといわれていますが、最近は小児肥満の増加に伴い2型も同等の頻度といわれています。

1型は、インスリンが不足するため、インスリン治療を継続して行います。2型は生活習慣の見直しと必要に応じ内服薬を使用します。MODYやMIDDは疾患に応じて対応が異なります。低血糖に注意しながら、最新のデバイスを駆使し、日常生活を送れるようサポートしていきます。

脂質異常症

多くは高コレステロール血症で、さらに家族性に発症することが多いです。まれな脂質異常症もあるので、精査を行い適切な治療薬を選択していきます。

尿酸異常

多くは高尿酸血症で、原因に応じて対応しています。必要に応じて尿酸を下げる薬を使用します。尿酸が低過ぎる場合もよくないことがあるため、適正な尿酸値かどうか確認していきます。

検尿異常

尿タンパク、潜血尿が持続する場合、腎疾患の可能性があります。すぐに診断がつく場合もありますが、長い年月をかけて症状がはっきりすることもあります。慎重な経過フォローが必要です。

腎・泌尿器系の形態異常(水腎症、膀胱尿管逆流など)があるときは、泌尿器科との連携が必要なこともあります。

夜尿症・昼間遺尿症

小学校入学後も夜尿症のお子さんはいます。しかし、宿泊研修などがあるため、10歳くらいまでには治しておきたいところです。尿の濃縮力、膀胱容量、便秘の具合、生活スタイルを確認し、状況に応じて薬物治療を行います。

ネフローゼ症候群

腎臓からタンパク尿が多量に漏れている状態です。体内のタンパクも減少しむくみが出てきます。入院で治療が必要になります。

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