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シリーズ 睡眠でお困りの方へ
-睡眠ついて 第2回-

前回の「睡眠について①」では、主に睡眠のメカニズムについてお話ししました。今回は、前回少しだけ触れた「厚生労働省が勧める睡眠障害対処12の指針」について解説します。

睡眠障害対処12の指針※1

一般的に7~8時間の睡眠が良いと言われることもありますが、科学的な根拠は少ないのが現状です。必要な睡眠時間は日中の眠気で困らなければ問題はなく、長ければ良いわけでもありません。

刺激物とはカフェインやニコチンなどを指し、緊張や強い刺激があると入眠が妨げられます。リラックス法には軽い運動、音楽、ぬるめの入浴などがあります。自分に合ったリラックス方法を探してみましょう。

就寝時間はあくまでも目安であり、眠気に応じて眠くなってから床に就くことがスムーズな入眠の近道です。就寝時間にこだわり過ぎず、眠たくなってから床に就きましょう。

起床後、目で感じた光は体内時計に伝えられ、体内時計のリズムをリセットします。そこから15~16時間後に眠気が出現します。睡眠時間を長くとり朝遅くまで床の中で過ごしてしまうと、体内時計のリセットが遅れてしまい、その日の夜の眠気が遅れて出るようになってしまいます。

太陽光の明るさは室内の10~100倍程度あると言われています。体内時計のリズムをしっかりとリセットするには、起床後になるべく早く太陽光を浴びる必要があります。

[食事]
 毎日の朝食を規則正しく摂ると、朝食の1時間ほど前から消化器系の活動が活発になり、朝の目覚めを促進します。
[運動]
 昼間の運動が夜間の睡眠を安定させ、睡眠の質を改善することが分かっています。日本人の成人に対して行われた調査では、運動習慣のある人は不眠になりにくいという結果が出ています。

最近の研究では、15時までの時間帯に30分未満の昼寝をすることは、日中の眠気を解消し、眠気による能力低下を防止するのに役立つことが分かっています。逆に、30分以上の昼寝は体が睡眠の体制になってしまうため、目覚めた後にしっかりと覚醒するのが困難になります。

睡眠に対して過剰に意識してしまうと不安な気持ちになってしまい、少しでも眠ろうと長く床の中で過ごすようになってしまいます。普段の入眠時刻の2~4時間前が最も寝付きにくい時間帯のため、早く床に入ってもなかなか寝付けず、さらに不眠を自覚し不安が増強されます。このような場合は、遅寝、早起きにして床に就く時間を減らすことが重要です。これにより必要な分だけ床に就くため熟眠感が増します。

疾患による症状によって、夜間の不眠とそれに伴う日中の眠気が睡眠と強く関連していることがあります。こうした疾患の場合は睡眠障害の専門治療が必要です。

強い眠気はナルコレプシー(脳の機能障害)等の疾患に伴う過眠症が隠れている場合があります。十分な睡眠をとるようにしても日中の眠気が改善しない場合は、睡眠障害の専門医の受診が必要です。

睡眠薬の代わりにアルコールを服用すると、寝付きは良くなりますが、睡眠が浅くなり中途覚醒が増えるため、結果として質の悪い睡眠になってしまいます。睡眠前の飲酒が習慣化すると体が慣れてしまい、同じアルコールの量では寝付けなくなるため使用量が増加します(耐性の形成)。また、睡眠薬代わりの寝酒は、通常の飲酒と比べて摂取量が急速に上昇しやすく、アルコール過剰摂取による精神的・身体的問題が起こりやすいと言われています(依存の形成)。

睡眠薬は医師の指示で正しく服用すれば、薬の耐性・依存性・離脱症状が強く出る可能性は低くなります。

睡眠に関して正しい知識をもち、快適な眠りに就いていただけたら幸いです。

この内容について解説した動画を公開中です!詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

執筆情報

執筆者:函館五稜郭病院 薬剤師

掲載日:2022年10月20日

参考文献・引用など

※1 厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」平成13年度研究報告書

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